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2007年 11月 25日 体育館
 11月18日に川崎アートセンターでの『ピアノのはなし』を打ち上げると、そのまま旅に出ました。
 文化庁主催の「本物と出会う舞台芸術」の旅で、12月の初旬まで新潟・富山・石川・福井・京都の小・中学校を巡ります。今回巡る学校は、先月から「演劇ワークショップ」をやって「お芝居はどのようにして作るのか」を経験して貰ったところです。1000人規模の学校から全校生徒15人の所まで、街中の学校もあれば山の中の学校もあります。でもすべて上演会場は体育館です。
 18日夕方、10人乗りのレンタカーと2t車で出発したところ、群馬県北部から雪がちらちらと降りだしました。関越トンネルを抜けると「そこは雪国だった」。
 レンタカーを借りるとき、普通のタイヤだったのでトンネルを過ぎると時速20~30キロばかりで進みます。チェーンもないし…。パーキングでチェーンを装着しなくてはならなかったのですが、しょうがない無視。進むしかありません。夜間になればなるほど雪は積もるし、南魚沼に着いた時は積雪30センチ。初雪とか…。おかげで宿に着いたのは午後11時。
 翌朝6時半にJAFに来て貰ってチェーンを着け、8時半から大巻中学校での仕込み・本番・バラシ。終演後、校長先生が「観劇していた保護者の方がお礼にといって急遽近くの酒屋さんに行って買ってきたものです。」といって控え室に届けてくれました。なんと銘酒「八海山」。そしてまた別のお母さんが南魚沼の名物チマキと草団子を…。これも終演後、車を飛ばして買ってきたものだそうで、おいしかった。
 初雪の魚沼の中学校の校庭は雪景色、八海山も真っ白でした。
 六日町のガソリンスタンドでスタッドレスに履き替えて、富山・入善町に出発。
 11月20日は入善中学校。21日は高岡市の南条小学校。22日は金沢市の鳴和中学校。でした。この連休はちょっと一休み。
 体育館での上演はたいへんです。舞台ではないところを演劇の空間にするところから始まります。残響がいちばん苦労するところです。生徒の多い学校は少々の残響があっても声が吸い込まれるので何とかクリアーできるのですが、生徒数が少ないと声がそのまま跳ね返ってきて、声を張れば張るほどなにを言っているのかわからなくなるのです。
 これは体育館ばかりではなく、普通の文化ホールでも言えることで、その現場に行って実際に声を出してみなければわかりません。
 先月、今度上演する各学校を廻ってみてたいへん印象に残った学校がありました。京丹後市の丹波小学校の三浦校長は体育館で小学生にささやき声で話されていたのです。なるほどと思いました。広い体育館ですが生徒数は数十人。声を張るほどワンワン響いてなにを話しているのかわからなくなります。たぶん長い経験の中かで培われた技なのでしょうか。
 俳優の訓練として発声やヴォイストレーニングももちろん必要なのですが、畢竟俳優の仕事は接客業です。土地土地の水に合わせるのも大事な仕事なのです。
 『ピアノのはなし』の舞台は体育館に放置されている古いピアノが物語るという設定です。体育館での上演はじつは望むところ。できれば古い廃校の体育館で夜、月の明かりの中で上演したいのです。
 何年か前、宮崎県の「こども劇場」の企画で延岡の山中の廃校のグランドに、グランドピアノを一台置いて校舎と裏山の林をライトアップして上演しましたが、とても幻想的な舞台になりました。宮崎県といっても12月の山中、ピアニストの佐々木洋子さんは鍵盤が冷たくて、夜気に震えながら弾いていました。僕は動いているからいいのですが、ピアニストには酷でした。
 まだまだこの旅は続きます。小学生の反応、中学生の反応。どれも毎回面白いです。冒頭、小学生に「私はピアノです」と語りかけると「えー、嘘だー、おじさんだもんねー」ガヤガヤするところから始まります。
by kyorakuza | 2007-11-25 01:18
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